平成10年4月1日から施行される法改正について(パート1)

  1. 「60歳定年制」の完全義務化について
  2. 急速にすすむ高齢化社会を背景に、昭和61年10月1日に「高齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)が施行されました。この法律を産業界では「60歳定年法」と呼んでおり、その主な内容は、事業主に対して65歳までの労働者の雇用を努力義務で規定しています。

    その後、平成6年6月17日に高年齢者雇用安定法は改正され、平成10年4月1日から施行されることになりました。改正された法条文は「(第4条)事業主がその雇用する労働者の定年の定めをする場合には、当該定年は、60歳を下回ることができない。…」となっており、60歳定年が完全に義務づけられました

    通達によれば、「…法4条に反して定められた60歳を下回る定年は民事上無効であり、事業主は、当該定年を根拠に労働者を退職させることはできないと解されるものであること。また、この場合、当該定年は60歳を定めたものとみなされるのではなく、定年の定めがないものとみなされると解されるものであること」とされています。つまり、平成10年4月1日からは、就業規則の定年が60歳未満だと、その会社は定年の定めのない会社とみなされ、定年を理由に労働者を退職させることができなくなります。

  3. 「年金」と「失業給付」の併給調整について

        平成10年4月1日以前は、60歳で定年退職をし再就職をしない人は、「特別支給の老齢厚生年金」と雇用保険法による「失業給付」の両方を受給できます。

年金支給開始年齢は原則65歳ですが、サラリーマン等の厚生年金加入者の場合、現状では60歳から年金が支給されます。これを「特別支給の老齢厚生年金」といいます。

雇用保険法第1条では、「労働者が失業した場合に必要な給付を行う」とあります。この給付のことを失業給付とよんでいます。失業給付には多くの種類があります。60歳で定年退職をした場合、300日分の「基本手当」が支給されます。(雇用保険の被保険者期間が20年以上ある場合)

 

年金は、現役を退いた人に、老後の生活保障の目的で支給されます。一方、失業給付は、働く意思と能力を持っている人が、仕事に就きたいが就けないときに保障されるものです。この2つの給付を同時に支給するのは、本来の目的から考えると矛盾しています。また、この2つの給付を合計するとかなりの額になるため、社会保障としては過剰ではないかという意見もありました。

そういうわけで、「特別支給の老齢厚生年金」と「失業給付」は平成10年4月1日から併給調整されることになりました。(失業給付が優先し、年金は失業給付をもらい終わってから)

  1. 昭和13年4月2日以降に生まれた人で、特別支給の老齢厚生年金の受給要件を満たす男女

昭和13年4月1日が誕生日の人は、法律上前日の平成10年3月31日に60歳に達し、その日に年金の受給権が発生するので、併給調整はされません。特別支給の老齢厚生年金と失業給付の両方がもらえます。このように1日違いで給付額に大きな差がでます。

特別支給の老齢厚生年金の受給要件は、次のいずれにも該当することです。

  1. 女性で、厚生年金保険の長期間加入者(加入期間が20年以上、または35歳からの加入期間が15年以上)、なおかつ、昭和14年4月2日以降に生まれた人
  2. 女性の場合、厚生年金に長期間加入した人は、特例により59歳から特別支給の老齢厚生年金を受給できます。

  3. 昭和18年4月2日以降に生まれた人で坑内員または船員だけの期間で15年以上加入した人
  4. この人達は、55歳で特別支給の老齢厚生年金の受給権が発生します。

  5. 生年月日とは関係なく、平成10年4月1日以降に特別支給の老齢厚生年金を受ける権利をはじめて取得した人

失業給付と特別支給の老齢厚生年金の関係

失業給付(基本手当)

 

特別支給の老齢厚生年金

失業給付(基本手当)

 

支給停止

特別支給の老齢厚生年金